いよいよ、司法試験本番です。試験直前の今、「本当に自分は合格できるのか」「まだ覚え切れていないことがある」「これまでの勉強で足りているのか」と、不安になっている人も多いと思います。
しかし、その不安は、皆さんがこの試験に本気で向き合い、ここまで懸命に努力してきたからこそ生まれるものでもあります。不安を完全になくす必要はありません。不安を抱えたままでも、これまでやってきたことを信じて、目の前の問題に向き合うことはできます。当日は、次の3つを意識してください。
周りに圧倒されず、「自分が一番強い」と思う
試験会場に行くと、分厚い論証集や、付箋が大量に貼られた自作教材を持った受験生が目に入ると思います。周りがものすごく勉強できそうに見えて、「この人たちに勝てるのかな」「自分よりも周りの方ができるのではないか」と、萎縮してしまうかもしれません。
しかし、皆さんも、司法試験を受験するところまでたどり着くために、相当な努力をしてきたはずです。法科大学院を修了した人、予備試験に合格した人、在学中受験の要件を満たした人。それぞれが異なるルートで、苦しい時間を乗り越えて、試験会場に立っています。自分がどれだけ努力してきたかは、自分にしか分かりません。だからこそ、本番では、「自分が絶対に一番強い」「この会場の中で、誰よりも自分が勝っている」——それくらいの気持ちでいてください。
実際に誰が一番できるのかは、答案が採点されるまで分かりません。周りがどれだけすごそうに見えても、必要以上に気にする必要はありません。深く息を吸って、これまで自分が乗り越えてきた時間を思い出し、堂々と試験を受けてください。
分からない問題は、条文・趣旨・基本原則に立ち返る
司法試験では、必ず分からない問題が出てきます。すべての論点を事前に知っていて、完璧な論証を準備できている受験生はいません。特に司法試験では、その場で考えることを求められる現場思考問題が出題されます。そうした問題に出会ったときは、まず、典型的な事例と比べて、今回の事例のどこが違うのかを探してください。
「なぜ、この事情が入っているのか」「典型の事案と比べて、どこが変なのか」「この違和感は、どの条文との関係で生じているのか」——その違和感こそが、問題の所在です。
正解が分からなくても、問題の所在を答案上に示すことができれば、それ自体が得点につながります。気づいた違和感を、分からないからといって無視しないでください。その上で、「この制度は、そもそも何のためにあるのか」「この条文は、誰のどのような利益を守っているのか」「これまで学んだ判例の考え方を応用できないか」と、条文・制度趣旨・基本原則に立ち返って考えます。
完全な正解が分からなくても、問題の所在を示し、条文や趣旨から筋道を立て、自分なりの結論を示すことができれば、点数は積み上がります。分からない問題が出たからといって、そこで諦めないこと。これまで身につけてきた法的思考力を信じて、最後まで考え切ってください。
終わった科目は振り返らない
司法試験は、複数日にわたる非常に長い試験です。一つの科目が終わると、「あの論点は、こう書けばよかったのではないか」「あの条文を間違えたかもしれない」「周りは何を書いたのだろう」と、どうしても気になると思います。休憩中に、周りの受験生が答え合わせをしていることもあるでしょう。しかし、終わった答案は、もう変えられません。そこで間違いに気づいても点数は戻りません。それどころか、落ち込んでしまい、次の科目に影響が出る可能性があります。
終わった科目は振り返らない。周りの答え合わせを聞かない。自分でも調べない。その時間があるなら、次の科目の条文や論証を確認してください。
司法試験では、一つの科目の出来に一喜一憂するのではなく、試験全体を通して、最後まで実力を出し切ることが大切です。一科目が終わったら、気持ちを切り替え、次の科目だけを見る。その切り替えを徹底してください。
最後に
司法試験は本当に長い試験です。当然、体調管理も非常に重要になります。直前だからといって無理に追い込みすぎて、体調を崩してしまうと、それが一番成績に影響します。最後まで勉強したい、少しでも多く覚えたいという気持ちは分かります。ただ、本番で力を出せなければ意味がありません。無理はしないでください。
そして、皆さんは一人ではありません。ここまで来るまでに、家族や友人など、いろいろな人に支えてもらったと思います。自分の時間だけでなく、家族との時間や、友人と過ごす時間、さまざまなものを犠牲にして、勉強してきた人もいると思います。そうした人たちは、きっと皆さんのことを応援しています。自分一人で戦っているように感じるかもしれませんが、決して一人ではありません。自分を応援してくれている人たちの存在を頭に入れながら、その応援を力に変えてください。
無理をせず、体調を整えて、これまでやってきたことを信じる。そして、できることであれば、試験そのものを楽しむくらいの気持ちで臨んでほしいと思います。
ここまで来た皆さんなら大丈夫です。当日は、「自分が一番強い」「分からない問題でも、条文・趣旨・基本原則から考える」「終わった科目は振り返らず、次に切り替える」——この3つのマインドセットを持って、最後まで頑張ってください。
今年は、私のロースクールの友人たちも多く司法試験を受験します。そのこともあって、今回は少しいつも以上に熱く書いてしまいました。書き終えてみると、少し恥ずかしい気持ちもあります。でも、この文章が友人たちをはじめ、今年司法試験に挑む皆さんに少しでも届き、試験当日にふと思い出してもらえるような言葉になっていたら嬉しいです。
ここまで積み重ねてきたすべてが、試験会場で皆さんの力になりますように。